
マイクロソフト・ディシジョン・ワン
Microsoft-Decision-1
の使い方・機能・解決する業務課題
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Microsoft-Decision-1(マイクロソフト・ディシジョン・ワン)とは?
Microsoft-Decision-1(マイクロソフト・ディシジョン・ワン)は、Microsoftが2026年10月9日に公開した判断特化モデルです。文章を生成せず、渡したテキストやJSONに対して、決まった回答候補ごとの確率を返します。質問の型はnoul(真である確率)・choice(候補から1つ)・score(順序のある段階)の3つで、料金は入力100万トークンあたり0.042ドル、出力は無料(TypeSafe AIのJevと同じ)。Qwen3.5-9BをMicrosoftが事後学習したモデルで、Microsoft Foundry(プレビュー)とOpenRouterで提供され、文脈は32,768トークン。問い合わせの振り分け・優先度づけ・AIの応答の採点・安全チェックといった大量の同じ判断に向きます。日本語の精度は公表されていません。
解決する業務課題
「Microsoft-Decision-1」のサービス詳細
Microsoft-Decision-1とは
Microsoft-Decision-1(マイクロソフト・ディシジョン・ワン)は、Microsoftが2026年10月9日(米国時間)に発表した判断に特化したモデルです(Microsoftの発表)。発表したのはMicrosoftのCTO室で、Microsoft FoundryとOpenRouterから使えます。
いわゆる生成AI(LLM)と違い、文章を書きません。状況(テキストかJSON)と、回答候補が決まった質問を渡すと、候補ごとの確率を1回の処理で返します。返ってくるのは "engineering" や 0.92 のような値なので、アプリケーションのコードはそのまま if で分岐できます。文字列をパースして、壊れたJSONをリトライで拾う処理が要りません。
円換算は1ドル=158.6円(2026年10月12日の欧州中央銀行の参照レート)。
料金と質問の型が、TypeSafe AIが2026年9月に公開したJevと同じであることから、日本でも「Jevの対抗馬」として報じられました。違いは下の「Jevとの違い」で整理しています。
何が返ってくるのか|noul・choice・scoreの3つ
質問の型は3つです。Microsoftのドキュメント(Deploy and use Microsoft-Decision-1)は、次のように使い分けを説明しています。
| 聞きたいこと | 型 | 返るもの |
|---|---|---|
| これは真か | noul | 0〜1の確率 |
| どの候補か | choice | 選ばれた候補と、すべての候補の確率 |
| どの程度か | score | 順序のある段階の上の値と、各段階の確率 |
- noul — 関門やフィルタに使います。「このツール呼び出しは本番データに触れるか」「この文書にプロンプトインジェクションが含まれるか」「このサポートの返信は返金を約束しているか」など。
criteriaで「真」「偽」が何を指すかを定義することもできます - choice — 分類と振り分けに使います。チケットの担当部署、意図や文書の種類、使うモデルやツールの選択など。最も高い確率が低いときは、人や別のモデルに回す合図として使うよう案内されています
- score — 順位づけと採点に使います。キューの優先度、AIの出力の採点、深刻度や苛立ちの度合いなど。段階は低いほうから並べ、返る値は段階の番号(0から)を確率で重みづけした平均です。4段階なら0〜3の間の値になり、段階と段階の間の値も取ります
1つのリクエストに複数の質問をまとめることもできます。担当部署をchoiceで、深刻度をscoreで、再度の問い合わせかどうかをnoulで、同じ状況に対して一度に聞く形です。
{
"model": "<デプロイ名>",
"state": "The API returns 500 on every call.",
"questions": {
"team": {
"type": "choice",
"instructions": "Which team should handle this ticket?",
"criteria": {
"billing": "Charges, invoices, and refunds",
"engineering": "Bugs, errors, and outages",
"support": "How-to and account questions"
}
}
}
}
使い方
-
Azureのサブスクリプションと、Foundryのプロジェクトを用意する
支払い方法を登録したAzureのサブスクリプションと、Microsoft Foundryのプロジェクトが必要です。デプロイするには「Cognitive Services Contributor」などのモデルをデプロイできる権限が要ります。
-
モデルカタログからデプロイする
Foundryポータルでプロジェクトを開き、モデルカタログで「Microsoft-Decision-1」を選んで「Deploy」します。Azure CLI(
az cognitiveservices account deployment create)でもデプロイできます。デプロイの種類は、Azureのいずれかのリージョンで処理するGlobalStandardと、一部のリージョンで選べるDataZoneStandard(データゾーンの中で処理)の2つです。 -
判断のAPIを呼ぶ
エンドポイントは
<Foundryリソースのエンドポイント>/providers/microsoft/v1/systemoneです。リクエストのmodelには、モデル名ではなく自分で付けたデプロイ名を入れます。認証はMicrosoft Entra ID(推奨)かAPIキーです。 -
正解つきのデータで精度を測る
ドキュメントのクイックスタートは、問い合わせの振り分けをchoiceで行い、正解ラベルつきの例で正答率と応答時間の中央値を測るPythonのサンプルです。本番に入れる前に、自社の代表的なデータに差し替えて測るよう案内されています。
OpenRouterからも呼べます(2026年10月時点でOpenRouterに掲載されている提供元はAzure)。
機能
01Microsoftが挙げている使いどころ
- 関門とフィルタ — ワークフローを先に進める前に、条件を満たしているかを確かめる
- 分類と振り分け — チケット・アラート・文書・リクエストを、決まった候補の1つに振り分ける
- 順位づけと優先度 — インシデント・リード・検索結果・レビュー待ちを、決めた尺度で並べる
- 評価と採点 — AIの出力を、段階のある評価基準で採点する
- モデル・ツール・エージェントの選択 — リクエストを処理すべき部品を選ぶ
02Microsoft社内での使われ方(発表より)
- Xbox Research — 1万件を超える自由記述のフィードバックを処理。GPT-6 Solと比べて14倍速く、コストは200分の1だったとしている
- Copilotチーム — チャットとエージェントの応答の品質を測定。GPT-5.6 Lunaより100倍速かったとしている
- Microsoft Discovery — エージェントが前の実験を評価して計画を立て直す機能に使用。LLMで採点するより46倍一貫しており、速さは3倍だったとしている
03生成AIとの組み合わせ
- 前段で振り分ける — Decision-1で振り分けや関門を判定し、通ったリクエストだけを生成AIに渡す
- 生成AIには任せる — 文章の作成・要約・書き換え・説明が必要なところは、生成AIを使うよう案内されている
料金
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入力 | 100万トークンあたり0.042ドル(約6.7円) |
| 出力 | 無料 |
| 文脈の長さ | 32,768トークン |
| Foundryでの提供 | プレビュー。従量課金のほか、PTU(予約したスループット)の選択肢がカタログに案内されている |
| OpenRouterでの提供 | 入力100万トークンあたり0.042ドル・出力0ドル(提供元はAzure) |
料金は税抜の表示です。Azure経由の請求額は、契約の通貨や税の扱いによって変わります。無料枠についての記載はありません(Azureの新規アカウント向けの特典は別枠です)。
1日10万件の問い合わせを、1件あたり400トークンで振り分ける場合、入力は1日4,000万トークンで、1日1.68ドル(約266円)です。出力には料金がかかりません。
性能|Microsoftが公表している数字
- 学習に使っていない36のベンチマーク(約15万問、振り分け・順位づけ・長い文脈・多言語・分布外・推論・安全性)で比べ、最も高い精度だったとしています。比較には、判断モデルの公開リーダーボード「JevBench」の上位モデルも入れたとされています
- 応答時間の中央値はGPT-6 Solの約35分の1、H2O-Lightning-4B v1.1より2.5倍速い
- 入力を少し変えたときに判断が変わる割合は平均1.3%
- 安全性は11のベンチマーク・5,250件のリクエストで検証
- 確率そのものがAPIの一部であり、「90%」と出たものは10回に9回ほど当たるように調整されている(キャリブレーション)と説明しています
これらはすべてMicrosoft自身の測定です。発表は公開後に「Jevの精度とキャリブレーションのベンチマークを追加した」と更新されていますが、第三者による検証はまだ出ていません。採用を決める前に、自社のデータで測ることが前提です。
日本語で使えるか・日本から使えるか
日本語の精度は公表されていません。Microsoftの発表は、評価に「多言語のタスク」を含めたと書いているだけで、対応言語の一覧や日本語の数字はありません。Foundryのモデルカタログにも言語の記載はありません。日本語の問い合わせや文書に使うなら、過去のデータを人がラベルづけしたもの(100〜300件ほど)で精度を測り、確率のしきい値を決めてから自動化するのが安全です。
日本からは、Azureのサブスクリプションがあればデプロイできます。ただし、日本のリージョン(東日本・西日本)で選べるかは、2026年10月13日時点で公式のリージョン一覧にまだ載っていません。GlobalStandard は推論をAzureのいずれかのリージョンで処理するため、データを国内で処理する必要がある業務では、デプロイ前にFoundryの画面で選べるリージョンとデプロイの種類を確かめてください。
苦手なこと・注意点
Microsoftのドキュメントとモデルカタログは、次の制約とリスクを挙げています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 文章は作らない | テキスト生成・自由な質問応答・会話・翻訳・要約には使えない |
| 理由を返さない | 判断の根拠となる説明文は出さない。値と確率だけ |
| 言い回しに敏感 | 質問や候補の書き方・並べ順で値が変わる。出来の悪い質問にも値は返ってくる |
| 慣れていない課題では確率の信頼性が下がる | 確率の調整は、よく知っている種類の課題で最も効く。古い知識に頼ることもある |
| 偏り | ベースのモデルや学習データの偏りを反映しうる |
| 安全フィルタとしての限界 | 微妙な有害コンテンツを見逃したり、問題のない内容を引っかけたりすることがある |
| 人に関わる重要な判断 | 与信・雇用・住宅・保険・教育・医療・法的権利などの判断の唯一の根拠にしない。人による実質的な確認を入れる |
ドキュメントは対策として、候補に「判断できない(cannot tell)」を入れておく、候補の並べ順を入れ替えて結果が変わらないか試す、誤検知と見逃しのコストからしきい値を決める、といったやり方を勧めています。
Jevとの違い
| 観点 | Microsoft-Decision-1 | Jev |
|---|---|---|
| 提供元 | Microsoft | TypeSafe AI(米国のスタートアップ) |
| 公開 | 2026年10月9日 | 2026年9月15日 |
| 入力料金(100万トークン) | 0.042ドル | 0.042ドル |
| 出力料金 | 無料 | 無料 |
| 質問の型 | choice・score・noul | Choice・Score・Noul |
| confidence | ドキュメントに記載なし(各候補の確率で判断する) | Choice・Scoreに専用の値が付く |
| 文脈の長さ | 32,768トークン | 64,000トークン(stateと最長の質問で32,000まで) |
| 提供状況 | プレビュー(Foundry) | 早期アクセス(ウェイトリスト制) |
| 始めるのに必要なもの | Azureのサブスクリプション | ウェイトリストからの案内 |
| 開発者向けの提供物 | HTTPのAPI、Azure CLIでのデプロイ | Python・JavaScript/TypeScriptの公式SDK、エージェント用スキル |
| 日本語 | 言語ごとの記載なし | 受け付けるが「英語より精度が低い」と明記 |
型の名前も、state と questions を渡すリクエストの形もほぼ同じなので、同じ質問を両方に投げて比べることができます。契約・請求・認証をAzureにまとめたいならMicrosoft-Decision-1、長い入力をまとめて判定したい・公式SDKやエージェント用スキルで早く組みたいならJevが候補です。JevとMicrosoft-Decision-1の比較は、記事「Jevとは|Microsoft-Decision-1との違い」でも詳しく扱っています。
ほかの選択肢との関係は次のとおりです。
- ChatGPT — OpenAIも2026年10月6日に同じ種類の「Decisions API」をパブリックベータで公開しています(gpt-6-luna、入力100万トークンあたり0.10ドル・出力無料、画像の入力にも対応)。すでにOpenAIのAPIで組んでいるなら比較の候補になります
- Claude — 文章の作成や長い推論は生成AIの仕事です。Decision-1はその前段の振り分けや、出力の採点を受け持ちます
- Dify — ワークフローの分岐条件にLLMを置いているなら、候補が事前に決まっている判断はDecision-1のような判断モデルに置き換えられます
- Qwen — Decision-1のベースになっているモデルの系列です
評判・話題
日本ではITmedia AI+などが「Jevと同価格の判断特化モデル」として報じ、料金と提供経路が話題の中心になっています。2026年9月にJevが「文章を生成しないAI」として注目され、10月にはOpenAIとMicrosoftが相次いで同じ種類のAPIを出したことで、判断特化モデルが1つの分野として見られるようになりました。公開から日が浅く、日本語での利用報告はまだほとんどありません。
よくある質問(FAQ)
QMicrosoft-Decision-1の料金はいくらですか
入力100万トークンあたり0.042ドル(約6.7円)で、出力は無料です。TypeSafe AIのJevと同じ料金です。Azure経由の請求額は契約の通貨や税の扱いによって変わります。
Q無料で試せますか
Microsoft-Decision-1専用の無料枠は案内されていません。使った入力トークンのぶんだけ課金されますが、単価が低いため、1件400トークンの判定を300件試しても入力は12万トークンで、約0.005ドル(1円未満)です。
Q日本語で使えますか
対応言語の一覧は公表されておらず、日本語の精度の数字もありません。日本語のデータに使う前に、自社の正解つきデータで精度を測ってください。
Q文章の生成や要約はできますか
できません。テキスト生成・会話・翻訳・要約は対象外と明記されています。生成AIの前段で振り分けや判定を受け持ち、文章が必要なところは生成AIに渡す使い方になります。
QJevとどちらを選べばよいですか
料金と質問の型は同じなので、提供のされ方で選びます。Azureで契約・認証をまとめたいならMicrosoft-Decision-1、長い入力(64,000トークン)や公式SDK・エージェント用スキルを使いたいならJevです。リクエストの形がほぼ同じなので、両方で同じ質問を試して比べるのが確実です。
本ページの情報は2026年10月13日時点で、Microsoftの公式発表・Microsoft Learnのドキュメント・Microsoft Foundryのモデルカタログ・OpenRouterのモデル情報にもとづきます。プレビュー中のモデルであり、仕様・料金・提供地域は変更される可能性があります。最新の情報は公式サイトをご確認ください。

